今年で9回目となる「雪形コンテスト」。今年もユニークな作品が多数寄せられました。
参考サイト >> 国際雪形研究会 URL http://www.yukihaku.net/yukigata
(コメントなし)
(フォト倶楽部会員
No.1024)
わずかに残った斜面の残雪模様が、突然、ガォー!
世界遺産である知床ならではの雪形に心を引かれました。民家のすぐ近くに現れるとは、まさしく「熊出没注意」です。よく見ると、大きく口を開けて何かを食べようとしているように見えます。その顔立ちがとても勇ましく、さらに、自然の豊かさまでも感じてしまいます。
熊を代表とする自然界の動物との「共生」は、知床地域はもちろん、北海道民、さらには人類が抱える大きな課題です。この雪形の様に、時々人間の生活圏に入り込むことがあるかもしれませんが、決して被害を与える動物だけではありません。人間も動物も自然がなくては生きていきませんので、お互いにバランスを保って生活していきたいものです。この雪形を眺めていると、自然界の動物とのつきあい方について改めて考える機会になりました。
審査員:山田 高嗣
ライオンも新幹線を歓迎です。
新幹線の札幌延伸が決まった今年ならではの作品です。右から流線型の新幹線が滑るように走ってくる姿を、左にいるライオン(雌かな?)が口を開け、吠えているような姿で眺めているという構図でしょうか。山肌の雑木林を伐採した跡だと思いますが、撮影する角度によって、このような雪形を創り出したのですね。
審査では、従来の融雪による雪形とは異なる新しいタイプの雪形の提案、旬のテーマ設定、形がイメージしやすい点などを高く評価しました。
少し惜しいと思ったのは、ライオンの部分です。私は、ヒグマ(もしくは白熊)と思ったのですが、その方が北海道らしいし、新幹線をお迎えするにもピッタリと思いました。しかも、撮影場所が小樽ということで新幹線の通り道ですから、北海道に新幹線がくるというリアリティ感が高まりますよね。次回も期待しています!
審査員:原文宏
あたたかい日差しの中、まだ小さい我が子を抱き上げるお母さんに見えました。 (フォト倶楽部会員 No.1019)
京極側から見た羊蹄山です。羊蹄山には浸食でできた深い谷が何本もあり、そこには冬の間に沢山の雪がたまります。春になっても谷の中の雪はなかなか消えません。また羊蹄山は独立峰のため周囲を取り巻く道路のどこからでも山の全容を見ることができます。他の多くの高い山は、近づくと前山が邪魔になって全容を見ることができません。
中央のやや右側に小さい我が子を抱き上げるお母さんが見えます。母親に「高い高い」をしてもらって喜んでいる子供の姿を想像することができます。
ニセコや羊蹄山一帯は北海道で一番多くの雪形が見える場所です。ニセコ一帯の白馬やニワトリは有名です。羊蹄山で私は人の巨大な顔、恐竜、カレイ、ラッコ、和服で踊っている女性の雪形を撮影したことがあります。5月中旬以降ならニセコや羊蹄山で雪形に出会う機会は多いと思います。問題は天候です。特に高い山は雲で覆われることが多いのです。雪形を通して、「自然は人の思うようにならない」ことも実感できます。
審査委員長:秋田谷 英次
カラスがカーと鳴いているように見えました。
この雪形は確かに「トリ」の形に見え、何のトリに見えるかは人それぞれだと思います。残雪模様の白黒パターンのうち、黒いパターンであることから、「カラス」というのは誰もが共感するネーミングでしょう。最近、街中のカラスには、人を襲ってくるものがいると聞きます。この雪形の様な鋭いクチバシでつつかれるかと思うと、とんでもない! 雪がもう少し解けて、クチバシが丸いカラスになれば、安心でしょうか?
カラスの形が現れた斜面をよく見ると、この斜面は笹地の様です。おそらく笹の上の積雪が一気に雪崩落ちる「全層雪崩」によって、この雪形ができたのではないでしょうか?つまり、日に日に積雪が解けて、形が徐々に現れたのではなく、ある時に雪崩が発生し、突如現れた雪形だと推測します。つまり、カラスが急に襲いかかるかのように現れたのでしょう。この出現過程について推測する楽しさがあり、大変興味を持ちました。
審査員:山田 高嗣
駒ヶ岳のピークの一つ、砂原岳の下辺りに、スキーをしている人の形の雪形があり、腕は左右に大きく開き、足は逆ハの字に開き、大きくバランスを崩しており、次の瞬間には転倒していることだろう 。
スキー場にいると、よくこんなスキーヤーを見かけますよね。私も、最近はあまりスキーをしなくなったのですが、小さいころ、よくこんな格好で転びました。両手にストックを持ったまま、手も足も左右に大きく開き、まさに転ぶ瞬間といった雪形で、顔の表情まで想像できそうです。両足からずれてしまったスキーのような雪形も周辺にありますし、ほかの人が転んでできた跡のような雪形もありますね。楽しく躍動感のある雪形です。
私を、今年の冬はスキーに行ってみようという気持ちにさせてくれたことと、「うわっ!転ぶ!」というネーミング、躍動感のある愉快な形、懐かしさに魅力を感じて選定しました。また、撮影場所が鹿部町側からの駒ヶ岳というのも理由の1つでした。道南からの「雪形」の報告は少ない上に、鹿部側からの作品は稀です。今後もぜひ、探し回って投稿してください!
審査員:原文宏
早いもので、今年も半年が過ぎました。
次の干支である蛇や、時の番人?に追われる竜を見つけました。
撮影データから雌阿寒岳に続く火山性砂礫に覆われた斜面の様です。植生は無いので凹部に貯まった雪が残ったのでしょう。今年の干支は“竜”、来年は“巳”です。中央の大きな雪形は“竜”という想像上の動物です。体は大きな蛇に似て、全身ウロコに覆われ、鋭い爪をもった4本の足と2本の角、耳があり、長い口ヒゲを持つと言われています。なるほど頭には角が見え、中央右側にあるのが前足でしょう。優しそうな“竜”です。その右側の縦長の雪形は“巳”すなわち蛇です。立ち上がって順番を待っているのでしょうか。一番右側は恐ろしげな顔の形をしています。撮影者は時の番人?と呼んでいます。ゆく年くる年、すなわち来年の干支の交代がスムーズに、不正がないように睨んでいるのでしょうか。
三つの雪形を結びつけて一つの物語に組み立てた発想の豊かさに感心し、最優秀賞としました。毎年この雪形が現れると面白いし、年によっては、さらに迫力ある「ゆく年くる年」が現れるかもしれません。
審査委員長:秋田谷 英次