今年で13回目となる「雪形コンテスト」。
雪形らしい作品から、これって雪形?雪像?という作品まで様々な作品が勢ぞろい。
みなさんの斬新な「雪形観」に、審査員も頭を悩ませました。
厳選なる審査の結果、昨年と同様m今年も残念ながら「最優秀賞」は該当作品無しとなりました。
優秀賞1作品、審査員賞4作品 計5作品が決定いたしましたのでご紹介いたします。
参考サイト >> 国際雪形研究会 URL http://www.yukihaku.net/yukigata
雪溶けと共に⽇々表情が変化します。
いい顔に見えるか、なさけない顔に見えるかは、その日の気分次第です。
写真中央に見える白い斜面が顔のように見え、山の地肌が出ている黒い3カ所が目と口に見えます。まるで山の上から麓を見下ろしているかのようです。白い顔に見える斜面は、傾斜や植生の周囲との違いによって雪が解け残っているのでしょう。黒く見える3カ所は、急傾斜のために積雪にクラックが入っているのではないでしょうか。斜面上の傾斜や植生の微妙な違いが、運良く顔のように現れたのだと思います。この偶然現れた形が雪形の造形美であり、魅力でもあります。
解説文には「いい顔に見えるか、なさけない顔に見えるかはその日の気分次第です。」とあり、雪形を見てまるで占いをしているかのように伝わってきました。一般的に、伝承的な雪形の中にはその年の雪形の見え方によって農作物の豊凶を占うというものもあります。この雪形の表情はいったい何を占っているのでしょうか?想像するだけでも楽しくなります。
また、この写真には観光地の一つ「小樽港の倉庫群」が入っており、観光資源と雪形という組み合わせも高く評価できます。今後、小樽港を訪れる観光客にこの雪形の存在が広まり、将来この雪形が観光資源の一つになることを期待したいと思います。
観光地という撮影場所、解説文に見られる想像力、写真の構図などを評価して、この作品を選定しました。
審査委員長:山田 高嗣
海岸から積丹方⾯を⾒ると、⼀か所雪崩であろうか地肌の見える場所があった。その跡がモグラがびっくりしているように⾒えた。
真っ白な大斜面に突如黒い形が現れたかのような写真ですが、その黒い形(ネガ型)を「モグラ」に見立てることによって、1枚の写真から動きやストーリー性を見いだしています。地中から出てくる動物としてモグラと名付け、そのモグラの出現が“間違えた”と表現している点は、とてもユニークに感じました。
モグラに見える黒い部分は、解説文にもあるように、おそらく全層雪崩の後に現れた山の地肌だと思います。全層雪崩の場合、はじめは斜面にクラックができ、そのクラックが広がり、そしてある時突然雪崩が発生します。つまり、このモグラの形は突然出現した可能性があります。もし毎年同じ規模や形の雪崩が発生しているのであれば、次の年もこのモグラに出会えるかもしれません。このモグラを観察するということは、雪崩の発生時期や場所の記録にもなり、雪崩の研究データとして活かされる可能性も考えられます。
写真に動きを与える表現力、モグラが間違って出現したというストーリー性、突然出現する雪崩という自然現象との関連性などを評価して、この作品を選定しました。
審査委員長:山田 高嗣
⼭頂付近に残る雪形が、⾜の爪を突きだした⿃に⾒える。
丁度高句麗の軍旗三⾜鳥とイメージが重なった。ただ画像は1本不⾜して、⼆足鳥だが…。三⾜鳥については正しくは「三⾜烏(さんぞくう)」です。TVドラマ「朱蒙(チュモン)」⾼句麗初代の王では、三⾜鳥と吹き替えされていたと思います。
私も、最初に見たとき、古代中国の文様に似たようなのがあったように思いましたが、朝鮮半島の古代王朝、高句麗の旗印だったですね。撮影者は、解説で韓国の歴史テレビドラマにも触れていますので、きっと韓流ファンだから、このような作品ができたんですね!
思わず、ネットで文様を調べてしまいました。確かに、クチバシからトサカの部分、後ろに反り返った羽など良く似ています。残念ながら3本足は、はっきりしませんが、全体としては三足鳥の特徴がでていると思います。
雪形は、動物や文字などをイメージされた作品が多い中で、旗印という新鮮さと、雪形に躍動感があること、ネーミングのユニークな所を評価しました。
審査員:原 文宏
⼤きく⽻を広げたタンチョウ鶴に⾒える雪形です。
大雪山の裾合平。新緑が萌える高原を大きく翼を広げて優雅に舞う丹頂鶴。低くたなびく薄雲が雄大さに彩りを添えているようですね。ちなみに、左の雪形は求愛ダンスを舞う丹頂鶴の様にも見え、セットで観賞すると楽しい物語が生まれそう。
鶴は千年、亀は万年。いずれも長寿のシンボルで古くから蒔絵や織物などのモチーフとして親しまれ、アイヌ民族には丹頂の舞を真似た舞踊もあります。いにしえの時代、こんな雪形を目にした旅人は道中の安全を願って手を合わせたのかもしれませんね。
審査員:残間 正之
⾼根ヶ原を縦横無尽に走り回って遊ぶエゾウサギのボスが、疲れたので斜面でひと休み・・・?
大雪高原温泉の見晴台から高根ガ原の東斜面に現れた大きなウサギ。
想像力を試されるような審査員泣かせの難解な雪形が多い中、実に分かりやすく、満場一致で優秀賞に選定しました。タイトルは「エゾウサギ」ですが、エゾナキウサギの耳は丸いので、これはエゾユキウサギでしょうか。
ユキウサギのラテン語の意味は「臆病なウサギ」だけれど、雪解けを待ちきれず大胆に姿を現したのでしょうね。白と黒のコントラストがまるで影絵のようでした。
審査員:残間 正之