今年で7回目となる「雪形コンテスト」。今年もユニークな作品が多数寄せられました。
参考サイト >> 国際雪形研究会 URL http://www.yukihaku.net/yukigata
キタキツネが山を駆け上がって行くように見える。
撮影時期が7月ですので、十勝岳といってもほとんど雪が消える時期です。最後の最後に残った雪が、山を駆け上っていくキタキツネの雪形に化けたのでしょうか。非常にコントラストがはっきりした、雪形らしい作品として評価されました。
影場所が安政火口周辺ですが、安政噴火は、十勝岳の噴火が歴史にはじめて登場し、北海道の命名者である松浦武四郎が目撃して記録に残しています。そのような物語と結びつけたネーミングも考えられると、この雪形が、さらに楽しく、奥深いものになるように思いますので、是非、次回はネーミングにも力を入れてみてください。
審査員:原 文宏
(コメントなし)
新緑とヤマザクラと「雪形」が見事に一枚の写真に納まっており、審査員一同「ありそうで、なかなか見られない、素晴らしい一枚ですね」と、うなりました。
雪との暮らしが半年ほど続く、北海道。私たち道民の春の喜びの気持ちを表している一例が、ピンク色の桜や梅、そして黄色のレンギョウも一気に咲く山の景色だと思っていました。来年の春からは、色とりどりの山と「雪形」とのハーモニーを探すことにしようと、この作品を見て心に決めました。首の角度も、勢いがある風になびく尻尾もすっきりと浮き上がり、わかりやすい作品でありますね。
審査員:かとう けいこ
(コメントなし)
国道275号の月形から新十津川間はピンネシリ(標高1100m)を含む樺戸山系のすぐ東側を走っていて、麓から頂上までの見通しがよい。しかも、この山系は豪雪地帯の増毛山地(暑寒別岳、1491m)の南東に位置し、豪雪をもたらす北西季節風の風下にあたるので、国道から見える斜面には沢山の雪が積もる。例年春になると多くの全層雪崩の痕が見られ、かって雪崩の研究をしていた私は、しばしば雪崩の写真を撮っていた山地である。
頂上付近の右側には、なるほど「ヤギさんの顔」に見える雪が残っている。目、鼻、あごひげはヤギさんの顔そのものである。背景の空には雲があるためか、写真そのものはあまり鮮明で無いのが残念である。白い部分や黒い部分をじっと眺めていると、ヤギさんの顔以外にも、いろいろな物に見えてくるから不思議である。融雪が盛んな時期なので、ヤギさんの顔に見える期間は短いでしょうが、もっと別の雪形が現れ、そして消えていくだろうと思うと楽しくなる。
審査委員長:秋田谷 英次
残雪と山肌の岩を見た途端、女の子が上を見ていると思いました。頭の部分の後ろの岩山が髪の毛に見えました。
山の稜線が重なりあう場所から、よく見つけ出したと思います。私は、この雪形を見て最初にイメージしたのが、「楼蘭の美女」です。私は、中国新彊ウイグル自治区の博物館で見たのですが、この雪形のように静かに上を向いて横たわっていました。さらに、頭の上の白い部分は王妃の冠で、胸の所で両手を組んで、胴体の黒い部分はシルクの帯が巻いているように見えました。どんどん、私をシルクロードの世界に引き込んでいく、この雪形の魅力に、思わず選んでしまいました。
(楼蘭王朝は、中国のタクラカマン砂漠の東に、2000年以上前に栄えて消えていった王朝ですが、その遺跡がある砂漠の中から発掘された女性のミイラが「楼蘭の美女」と呼ばれています。)。
審査員:原 文宏
山の上部の雪形が右斜め上方向に山を駆け上がっていくウサギに見えました。 修学旅行で北海道に行った時に撮った写真です。
雪形を見たら頂上に駆け上がっていくウサギに見えたので撮ってみました。
雪形の審査をさせていただくようになり、今年で5回目となりました。審査方法は、審査委員が5点ずつ気に入った作品を選び、その中から複数名が推薦したものを集め、最優秀賞、優秀賞を協議します。その後、各審査員が「これは!」という作品を審査員特別賞として選出する流れです。
私がこれを強く推した理由は2つあります。北海道の中にたくさんある秀峰のなかでも、その力強さや、季節によって印象が変わる多様性に惹かれている「羅臼岳」であること。そして、関東在住の高校生が修学旅行の途中に撮影し、投稿してくれたことです。ぜひ、この入賞をきっかけに、若き雪形ウォッチャーとして成長していただきたいと思います。
審査員:かとう けいこ
岩内方面から来ると寿都町の後ろの山々に色んな雪形が現れる。
そのうちの一つで、まるでからす天狗とドラゴンがにらみ合いをしているように見えた。 その下で、かわうそが隙を狙っているようにも…
国道229号は小樽から積丹半島を通り江差町までの日本海岸を通る道路である。地図を見ると撮影場所は寿都湾に面した道路で、湾の対岸に月越山脈(母衣月山、504m)が見える。寿都湾の東側(撮影場所の背後)には天狗山(840m)があり、そこには天狗がいたのだろうか。二つの雪形は残雪の白い模様ではなく、急斜面に積もった雪の一部が滑り落ちて、地肌が出た黒い模様である。
左側が「からす天狗」である。からす天狗は日本の伝説上の生き物で、嘴状の口と黒い羽根を持ち、山伏装束を着ている。神通力と剣術に長け、牛若丸に剣術を教えたという言い伝えもある。鳥取県大山町にはカラス天狗の言い伝えがあり高さ8.88m、重さ約10トンの像がある。
右側にはからす天狗とにらみ合っている「ドラゴン」が見える。ドラゴンは西洋の伝説上の生物で、ヘビに似て、鋭い爪と牙を持ち、多くは翼をそなえて空を飛ぶことができ、しばしば口や鼻から炎や毒の息を吐くという。日本語では「竜」と訳される。日本神話に登場する「ヤマタノオロチ」も竜の一種とされている。また水の神として各地で民間信仰の対象となった。旱魃が続くと竜神に食べ物や生け贄を捧げたり、高僧が祈りを捧げるといった雨乞いが行われた。
信仰と結びついた伝説上の2つの生き物が同時に現れ、にらみ合っているとも見えるが、どうやって平和な人類社会を築くか知恵を絞っているようにも見える。積丹を含む美しい海岸沿いの道路から、目を山側に移すと思いがけない立派な雪形が発見されましたが、我々人間社会に対する自然からのメッセージと受け止めたいと思います。
審査委員長:秋田谷 英次